呉智英

治安維持法は、どんな右翼、どんな保守主義者でさえ顔をしかめ、リベラリストや革新派であれば絶対的に嫌悪する悪法である。これが成立したのは、普通選挙と同年である。これは、普通選挙法が治安維持法と「引き替え」に成立したからだとされる。その通りだろう。しかし、治安維持法が強化され、上限に死刑を含むようになったのは、普通選挙が成立普及して以後のことである。普通選挙は言論弾圧・思想統制に全く無力であった。 政治というものは、選挙というものは、民主主義というものは、このようなものなのである。